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変形性ひざ関節症

取材先情報

浜松南病院 人工関節・リウマチセンター
丸山 正吾 先生

患者情報

性別女性
年齢81歳
障害部位両膝関節
診断名変形性膝関節症
活動レベル疼痛により外出不能な状態

変形性膝関節症の状態

単純X線所見
– 左右両膝関節においてKLgrade4の変形性膝関節症(OA)を認めた。

自覚症状

自覚的疼痛部位
– 両膝内側関節裂隙(特に左側)に疼痛を自覚。夜間痛を伴い不眠あり。

動作時疼痛
– 歩行時に疼痛を訴える。

疼痛により制限される動作
– 外出不能。階段昇降が非常に困難な状態。

従来治療とPFC-FD™︎の位置づけ

既往治療
– 3年前より近医でヒアルロン酸注射を定期的に継続していたが、疼痛は徐々に増悪し外出困難となった。家族の勧めもあり、再生医療を希望して来院した。

当院における治療方針
– 当院では、まずヒアルロン酸定期注射を行い(関節水腫がある場合、初回はステロイドを併用)、改善が得られなければNSAIDを併用する方針をとっている。

PFC-FD™ 導入の経緯
– 前医にてヒアルロン酸注射が1か月ごとに1年間継続されていたが、症状の改善は限定的であった。画像上、関節裂隙は約2mm程度残存しており完全な末期所見ではないものの、外出困難な状況を改善するためには従来とは異なる治療介入が必要と判断した。
– 将来的な人工関節置換術の可能性を患者に説明したうえで、本人より「軟骨が残存している段階で試みたい」との同意が得られたため、低侵襲で症状改善を図る治療としてPFC-FD™ 投与を位置づけた。

適用判断の基準
– 当院では関節裂隙が1mm以上残存していることをPFC-FD™ 適用の目安の一つとしている。
– 関節裂隙が消失している症例では軟骨基質の消失が示唆され、組織修復の基盤が乏しいことから、PRP等の生物学的治療による効果は限定的と考えられる。
– 一方、関節裂隙が残存している症例では組織修復反応が期待できる可能性がある。
– また、PFC-FD™ は重篤な有害事象の報告が少なく、安全性の観点からも導入しやすい治療選択肢である。
– 関節裂隙が一定程度保たれている患者に対しては、治療効果の可能性と限界、および費用負担について十分に説明し、インフォームドコンセントを得たうえで治療を選択している。

投与方法

投与量PFC-FD 2.0 6mL(3mL × 2本)を生理食塩水2mLで溶解。
(高濃度製剤の方が、より高い有効性が期待できると考える。)
投与回数1回
穿刺部位膝蓋上嚢外側より膝蓋大腿関節に注入(全例膝蓋上嚢外側からアプローチ)
手技詳細手術創部への直接穿刺を避け、創部を回避した側方アプローチにて穿刺した。

縫合部に対し投与操作が行いやすいアプローチとし、超音波ガイド下に縫合部および周囲組織を確認しながら投与を行い、薬剤の確実な到達と安全性の確保を図った。
備考内側関節裂隙への疼痛に対して膝蓋大腿関節への注入は大きな影響はなし。

水腫のある患者では、PFC-FD™が薄まってしまうことを避けるために水を抜いてから注射することが望ましいと考える。

予後とフォロー

投与後の経過
– 投与翌日より疼痛がほぼ消失し、長期間できなかった外出が可能となった。
– 投与後1か月で疼痛は投与前の1/10程度に改善し、3か月後には0/10となった。
– 6か月後も0/10を維持しており、日常的な外出や畑仕事も再開可能となった。

投与翌日から疼痛がほぼ消失するケースは経験がなく、予想外の経過であった。

典型的な反応としては、投与後2週間で効果を実感し、4週間で疼痛が3割程度に改善するケースが多い。

4週時点で効果が得られなくても、12週まで経過を観察すると効果を実感する例もある。

一方、12週時点で効果の実感がない場合、その後の経過でも改善が得られることは稀である。

画像上の変化
– X線上では投与前と比較して関節裂隙のわずかな狭小化を認めた(悪化傾向)。

疼痛改善のメカニズムについては、関節のびらん(エロージョン)が改善したことが一因である可能性を考えている。

また、本症例における投与翌日からの急速な疼痛軽減については、プラセボ効果の関与も否定できない。

本症例は長年診療してきた患者の家族であり既に信頼関係が築かれていたこと、患者自身が本治療に大きな期待を抱いていたこと、さらに高額治療であることが、プラセボ効果として作用した可能性がある。

投与後2週間以降の持続的な効果についてはPFC-FD™ 本来の効果によるものと考えている。

臨床評価スコアの推移
– 投与1ヶ月で投与前と比し痛みが1/10となり、投与3ヶ月では0/10 6か月も0/10を維持

6ヶ月時の JOA Score 85(歩行25 階段20 ROM30(0-130)水腫10)

JOAスコアが45から85へと大幅改善した要因として、プラセボ効果が寄与していると考える。

投与後2W以降の効果はPFC-FD™によるものだが、投与後翌日に疼痛が軽減できる理由を説明できない。

本症例が、私が長年診ている患者の家族でありすでに信頼関係ができていたことや、患者が本治療に大きな期待をしていたこと、高額な治療であるということがプラセボ効果として働いた理由だと考えることもできる。

経過観察期間とフォロー体制
– 診察は投与後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月。6ヶ月以降は希望によりヒアルロン酸注射再開

ヒアルロン酸を再開した理由と判断基準については、6ヶ月間はPFC-FD™の効果判定のため他の治療は控えるようにしているが、関節裂隙が狭く症状が残存していたらヒアルロン酸の対象としている。

リハビリの指導は行うが自宅でできることは自宅でするように伝えて、患者には病院でしかできない治療を提供するようにしている。

そのため、外来では基本的にヒアルロン酸の注射を行いながら経過を診ている。

有害事象の有無とその対応
– 特記すべき有害事象は認めなかった。

その他項目

患者満足度やアンケート結果
– 疼痛はほぼ消失し、久しぶりに外出が可能となったことに加え、日常的な外出や畑仕事も再開できたことから、患者満足度は非常に高かった。

リハビリや運動制限の指導内容
– 再生医療を効果的にするため、軟骨の消耗速度が再生速度を上回らないことが肝要と考えています。したがって投与後1か月は調子が良くてもADLを拡大し過ぎないよう説明しています。
– 具体的には治療前の生活習慣を維持するように伝えている。
– 痛みがよくなって急に運動を行うと、再生よりも消費が上回ってしまい十分な治療効果が見られない恐れがある。
– 体重管理や筋力トレーニングの指導については、椅子に座り足を地面と水平に上げて、仕組みを90度に曲げる運動を行うように指導している。
– 片足20回を両足分、毎食後に行い一日合計3回行うように伝えている。
– 食事の後に運動を行うことで、生活の中に運動が組み込まれて忘れることなく実施されて習慣になるため、このように伝えている。

※「PFC-FD™︎」はセルソース株式会社の商標です。